一概に病院側だけを責められぬ自身が
最初に強く念押しから話を始めさせていただきます。
病院内に於ける病院関係者が患者に対し暴力を振るう行為は、一切の言い訳の余地が見当たらぬ断罪です。
ですが真逆すなわち患者から病院関係者への暴力が確かに存在している事実に関しては、殆どのメディアが意図的にスルーしているとしか、私には言えないのも確固たる事実です。
院内暴力とはそれほどまでに繊細かつ深刻な問題である事を、冒頭で今一度繰り返し、以下に話を続けさせていただきます。
各メディアが大衆に伝える院内暴力の原因の大半は、病院関係者のストレス発散、あるいは言葉では言う事を聞いて貰えぬ果ての実力行使のエスカレートなど、いずれも病院関係者側の「プロ失格の衝動的愚行」とされています。
これは間違いない事実でしょうし、健康面でも体力面でも劣る患者さんに対し、暴力という手段で心身に苦痛を与える行為は、医療とは真逆の愚行であり、医療機関という看板を掲げる資格すら見当たりません。
ですが全てが病院側の人間の一方的かつ短絡的な感情の爆発ばかりとは言えない現実、決して同じ病院関係者としての弁護では無く、ぜひ冷静に受け止めていただければ幸いです。
患者からの腕力以外の暴力の存在
病気に心身を冒されれば、自制心が正常に働かず、いわゆる子供帰りを更に超越した言動に及ぶのは、患者さんの状態からすればある意味仕方無い状況だと、私達病院関係者側には「受け止める度量」が求められます。
ですが明らかに常軌を逸したレベルの患者さんの暴言暴挙に悩まされる病院関係者側の苦労に対し、理解や同意こそ求めませんが、その現状をぜひ冷静に知っていただきたいのです。
若い看護師に対する極端なセクハラ、明らかに一線を越えた暴言、更には医療施術中に暴れ出し、患者さん自身のみならず医師や看護師にも危害が懸念される程の状況など、決して「でっちあげ」では無いのも医療現場のシビアな現状なのです。
多くの医療機関ではこうしたリスク対策として、有事には病院側の判断で患者の身体を固定(=縛りつける)、あるいは鎮静剤などを投与する旨を同意書に明記し、家族の理解を求める事で自衛に努めています。
それでも患者さんの想定外の暴言暴挙に際しては、何より患者さんの健康と安全を守るべく、病院関係者側が咄嗟に腕力を用いざるを得ない場面もまた、皆無とは言えないのです。
語れば語る程、堂々巡りが続くばかりですので、最後にもう1度。
院内暴力は断じて許される行為ではありませんが、止む無く病院関係者が患者さんを「腕力で制御する事で安全と健康を確保する行為」に関しては、院内暴力とは分けて捉えていただければ幸いです。