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  3. 奨学金や助成金制度事情 国や病院への期待

奨学金や助成金制度事情 国や病院への期待

奨学金や助成金制度事情 国や病院への期待

大変な努力の果てに医師免許を取得された各科の医師の方々が、大都市圏の総合病院勤務を希望される
価値感は、資本主義国家の経済社会に於いて「職業医師」を選択された以上、至極当然である理由は
先に述べた通りです。だからこそ医療の地方格差是正策とし国に期待したいのが、地方地域密着の
開業を目指す若き医師の卵への正しい啓蒙活動及び、そうした医師の方々への積極的な
奨学金あるいは助成金制度の適用なのです。

現状を冷静に分析するまでも無く、人口が閑散とした地方地域での開業あるいは病院勤務に対しては、
一個人としてはメリットよりもリスクが感じられて当然です。仮に自身の心中、自分は地方地域に
根差した医療活動に一生を捧げたいと考えていたとしても、それは自身の生活と十分な医療活動が
継続出来る環境の確保が出来てこその話です。

求人一つとっても、東京や大阪のような大都市と、私が住んでいる岡山では全く内容が違います。
医師求人サイトを確認したところ、岡山から近い大阪府の求人は286件、岡山県の求人は57件と、5倍ほどの差が開いています。(求人サイト、ドクターキャスト大阪岡山より)

さらに看護師は病院だけではなく、保育園で働くこともできます。保育士の補助や衛生管理を行うため、人によっては病院よりも働きやすい環境です。そんな保育の求人も大阪府求人数679件、岡山県97件と大きな格差が生じています。
この求人数を見て、岡山で仕事を探したいと思う人がどれほどいるでしょうか。

大都市の求人数に加え、大規模医療機関と比較して圧倒的に乏しい医療設備、努力に伴わぬ収入、有事の他の医療機関との迅速な相互連携が叶わぬ複雑な職場環境などを冷静に検証すれば、地元での就職に二の足を踏んで当然でしょう。
全国の医療環境を完全に平等に揃える事は当然不可能ですが、地方地域での医療業務への従事に対し、
何らかの公的なメリットを国側が準備する事で、僅かでも地方の医師不足を改善出来るのであれば、
実施の価値は十分だと考えています。

人材確保という問題は、漠然と人を集めるだけでは解決が難しい問題でもあり、より高度な知識や
技術を有した人材を育てられるという前提で、初めて解決の糸口が見えてきます。そのため、
教育機関や制度の充実なども求められてきます。このあたりは個人レベルでの解決が難しいため、
国や自治体に期待したい部分でしょう。

近年は専門機関を通じて、高校生が留学先で医療を学ぶことも容易になっています
海外の医療知識や技術に加えて、優れた制度や取組みを国内に導入することも、医療問題の
解決の方法として、採用すべきなのかもしれません。

病院関係者の1人として

病院の運営に携わる立ち位置の私ですので、病院経営の難しさに関しては一般の方々よりも
深い部分で色々理解している自負があります。決して保身に走るつもりこそありませんが、
単純に感情や持論に任せて「この部分をこう改善すれば良いのに」と発言し辛い点、
ご理解は求めませんが、こうした部分を差し引いて、以下をご一読いただければ幸いです。

慢性的な医師不足、看護師不足は結果、より不規則かつ過酷な勤務シフトを在職者に強いる事
に繋がります。人材が充実している大都市圏の大規模病院と比較して、圧倒的に回数が多い夜勤、
長時間勤務、更には通勤アクセスも都心部と比較すれば負のハンデが大きく、日々の負担も
大きいのが地方地域です。病院経営に於いて、どの部分に経費のウエイトを置くのか、
その最終判断は当然経営陣に委ねられますが、出来れば従来よりも更に医師や看護師の
人件費にそのウエイトをかけていただきたい、これが偽らざる本音です。対患者や地元地域への
対外的好印象を優先させるべく、建物や設備に費用を投じるのも確かに大切ですが、
患者さんの健康を守る医療行為を施すのは医師であり看護師なのです。

地方地域の場合「数有る」とは一概に言えませんが、それでも経営者からすれば
「自院に従事してくれている大切な人材」です。意味無き過剰な優遇を求める訳ではなく、
過酷が当たり前的になし崩しになっている労働環境を改善すべく、より積極的な
人材確保と魅力ある条件提示に努めていただければと願っています。