理想論と現実のギャップ
慢性的な医師不足、看護師不足に関しては、以前から国も現場も重大な危機感を抱き続けています。
当然一刻も早い現状改善を目指し、さまざまな改善案が議論され、具体的な対策も協議から打ち出されていますが、悲しいかな「机上の理想論止まり」なのが現実です。
現状の分析から数値などを細かく弾き出し、そこから「このような対策を講じれば数値的にこれだけ改善出来る計算になる」との理論だけが続々と挙げられるも、それが現実離れしているのです。
いわゆる上層部とされる方々からすれば、議論から結論を導き出したところで「役割は果たした」となっているのかと勘繰ってしまう程、現場の実態を見ていない、都合の悪い点はスルーの姿勢が顕著といえます。
これは病院という患者さんやそのご家族と直接対峙する職場に勤務する私にとっては強烈なストレスであり、同時にこうしてブログを通じて訴える事しか出来ていない自身を責める大きな要因なのです。
大都市には当然多くの医療機関が集中し、それに比例して医師や看護師数も多くなって当然ですが、同時に患者の絶対数も多い訳ですから、決して十分な医療体制が整っている訳ではありません。
何より各々の医療機関の規模が大きい傾向故、仮に1ヶ所が何らかの事情で閉鎖してしまえば、入院患者の次の受入先、通院中の患者の転院先など、その対応は深刻な状況が避けられません。
勤務先を失った医師や看護師に対し、「ならば地方の慢性的人材不足の病院に勤務すれば良い」と安直には言いにくいでしょう。
医師や看護師も自分達の生活基盤が有る訳ですから、パズルを埋めるような人員配置は出来ませんし、これは入通院先を失った患者さんにも共通して明言出来る事なのです。
地方地域の病院が閉鎖してしまった際の悪影響は、時に更に深刻です。
元来医療機関の絶対数が少ない上に、各々も遠く離れている立地条件が常ですので、物理的に患者さんが通院出来なくなるケースが避けられません。
職場を失った医師や看護師に関しても、大学側が引きあげる動きを見せる事例が多く、地元の他の医療機関は人件費など経営上の問題からこうした人材の再雇用に二の足を踏みがちです。
結果慢性的な人材不足の改善には繋がらず、多くの医師や看護師が他の業種同様「大都会へ出て行ってしまう」傾向に歯止めが効いていないのです。
都道府県単位の対応に期待
それでも全てが悲観的あるいは絶望的な状況とも言い切れません。
実際に各都道府県毎に、大学、病院、あるいは医師会と連携を取り、現場に即した医師や看護師の確保に繋がるさまざまな試みが発案から実施されています。
全てが速やかな期待通りの効果に繋がっているとは明言出来ませんが、こうした積極的な試みの実施に対しては私自身も高く評価していますし、結果を踏まえて更なる改善策を次々と講じていただきたい限りです。
ちなみに具体例を挙げれば、奨学金制度の導入で医師不足、診療科不足が顕著な地域の医師確保に努めています。
こちらのサイトも参考になりますのでご覧ください。
>>先進政策バンク|全国知事会
また都心の大病院勤務では無く、あくまで地域医療の医師を志す医大生、研修医をさまざまな視点からバックアップする制度も発案されています。
更には各病院の勤務環境を調査から必要に応じて改善、更には絶対的不足が顕著な女性医師を支援するなど、医師が無用な心身の負担を覚えずに勤務出来る環境整備にも余念がありません。
緊急時の各医療機関間の連携体制の強化、各科の集約化に因る緊急時の専門医の迅速かつ柔軟な確保が可能な体制確立など、絶対数不足を現状の人数でカバーするシステム構築が試みられています。
他にも、開業セミナーなどを行い、地域での病院、医師確保に向けてコンサルティングを行っているところもあります。
歯科医師限定となりますが、歯科医を目指して開業をしたいけれど色々不安があるという人はセミナーなどを通して開業について学ぶことができます。
こうした活動が、医師不足の解消につながることを願いたいです。